02.The principal and a ghost and a guard
誰も居ない旧校舎の中を懐中電灯の光だけで進んでいく三人。
裏生徒会に入ってから初めての任務が旧校舎の中に居ると噂されているお化けの噂の根拠を突き止める事、だった。
流石に一人では危険だとヴェルドとツォンが判断したため、レノとルードが一緒に行く事となった。
理事長室に一人残ったのはだった。
アッシュか飛でも居たら私も一緒に行きますのに。と言い残した彼女に災厄が待っているのはまだ誰も予想だにしていなかった。
「お化けなんて…本当に居るんでしょうか…」
ぎゅっと懐中電灯の柄を掴み、恐る恐る進んでいくがごくりと生唾を飲み込みながら呟く。
本来、お化けや怪談が大の苦手な彼女はこの任務は断るつもりで居たのだ。なのに、レノが「俺とルードも一緒に行くから大丈夫だぞ、と」等と一等の笑顔で微笑むから根負け(?)して、は思わず引き受けてしまっていた。
「さぁな、と」
「大丈夫だ、。…この世の中で一番怖いのはお化けや幽霊何かじゃなく、人間なんだから」
暗い旧校舎の中でもサングラスを外していないルードがの頭を軽くなでる。
ぎしぎしと木で作られている古い廊下は三人が歩くたびに軋んだ音をあげながら、まるで侵入者を拒むかのような音をたてる。
逃げ出したいくらい怖い。
「しかし、こうしてみていると何もないな…、と」
突如上から木のみしみしっという音が響き渡り、三人は一斉に上を見た。
遡る事、二十分前。
一人理事長室で優雅に紅茶を飲んでいたの元に現れたのは校長だった。
「何をしているんだ…此処で」
「肝試しよ、ルーファウス」
「貴方は?」
「アッシュか飛でも居たら行こうと思ってたんだけど…残念ながらこの有様なのよ」
くす、と笑って右手を上へあげて理事長室全体を見回すように動かす。
「じゃあ、私がお供いたしましょうか?」
「よくってよ。じゃあ、行きましょ、ルーファウス」
にこりと微笑んでは懐中電灯の一つをルーファウスへ手渡した。
かち、かちと何度かスイッチを入れたり切ったりしてつくかどうかの確認をする。幸い、電池は入れ替えられたばかりのようで明るい光を懐中電灯は前方へ打ち出す。
……そして現在に至る。
レノ、ルード、組が一階を闊歩している中、、ルーファウス組は二階を闊歩していた。
ぎしぎし、みしみしという木造建築独特の音が妙に大きな音となって耳まで届く。
「へっぴり腰ですわよ、ルーファウス」
強がった口調では言うが、内心も相当怖がっていた。
出来る事ならルーファウス一人を残して逃げ去りたいくらいには。だが、持ち前の意地っ張りな性格と強がりが災いして減らず口をたたいてしまう自分が憎かった。
ルーファウスはルーファウスで何故あんな事を言ったのか非常に後悔していた。赴任当時、一度だけこの旧校舎へ入った事があるのだが、昼間だったためか余り怖さを感じなかった。が、夜入ってみると真っ暗な校舎の言いも知れぬ恐怖に全身の毛が逆立つ。
そんなに長いとは感じなかった廊下が無間の長さに感じるし、ところどころひび割れた硝子も何となしの恐怖を体内へ呼び込む。
時折、外からの風が窓を揺らし、ぎーぃ、と軋んだ音を立てる。
「ねぇ、ルーファウス」
の声音が心なしか震えて聞こえる。
が、何だ?と返事を返すルーファウスの声もそれに負けないほど、震えている。
「ちょっと早く歩かない……?ほ、本気で怖くなってきたんだけど」
「同じ事を考えていた……」
互いに目をやるとニッと笑い、足早に二階から一階へ降りる階段を探す。
一階への階段を争うように降りると前方に三つの懐中電灯の光が見えた。本能的にそっちへ駆け出すと暗がりでもはっきりと判る、驚いた三人の顔。
「!レノ!ルード!」
「!?それに校長まで!」
「ちょうど良かったですわ!一緒に参りませんこと!?」
ぎゅうっとを抱き締めた形では捲し立てる。
ルードがとルーファウスを見比べ、ゆっくりと視線を天井へと移動させる。
二人が降りてきた後も尚、まだ続くぎしぎしという誰かが歩いている音。
それにレノも気付いたらしく、ふん、と小さく鼻を鳴らした。はまだ抱きついている状態のの背中を軽く撫でて慰めている。
「誰かに逢いませんでしたか、と。校長」
幾分か冷静さを取り戻したらしいルーファウスがレノの言葉に対し、ゆっくりと首を傾げるが「いや」と短くだけ答えた。
誰かが居るのは間違いない、とレノが懐中電灯を片手に階段を登ろうと足をかけた瞬間、上から眩しい光で照らされた。
「何をしてらっしゃるんです?」
声の主はだった。
「…!?」
が素っ頓狂な声をあげる。
「他の生徒から警備室に通報がありまして。旧校舎の中に何人か人が居るようだ、と」
警備員の制服に身を包んだが階段を一歩ずつ下りてくる。
「もしかしては毎晩警備をしてらっしゃるのかしら?」
「旧校舎とはいえ、学園の設備に違いはありませんからね。ちょっと古びた校舎ですが、この中に異変はありませんよ」
「じゃあ、後は任せるぞ、と」
帽子を被りなおしたが戸惑ったような笑みを浮かべ、レノはルードとの背中をぽん、と叩いた。
それを合図にしてか、レノを先頭に四人が背中を向け、旧校舎から出て行く。
理事長室のドアの前でルーファウスは「全く…」と言いながら校長室へと足早に戻っていった。
暖かい紅茶が飲みたいとはぶつぶつ言いながら理事長室の扉を開けた。中にはヴェルドとツォンがソファに座り、何かしらの資料を広げて四人を出迎えた。
「どうだった?」
「どうやら毎晩出るっていうお化けは警備員だったようです、と」
レノが言い終わると同時に理事長室の扉が開いた。
「警備員?」
「そーそー。に逢って…」
「俺に?」
四人が一斉に後ろを振り向く。
「旧校舎に居たんじゃ!?」
「は?ずっと俺はこの新校舎の中の見回りをしていましたよ」
きょとん、としたの表情に四人の顔が対してどんどん暗くなっていく。
一秒後、本校舎の中に四人の絶叫が響き渡った。
To Be Continued