「どうしたんだよ、と」

隣を歩いていた、金糸の色の髪の毛の彼女がふと立ち止まった。
勢い余って数歩前を歩いていたレノが、バックステップしながら彼女と同じ位置まで戻る。そこには『春の新作スィーツ始めました』と書かれたポスターが貼ってある。どうやら、今月は苺がメインらしい。

「喰っていくか?」
「え?」

別に当てもなく歩いていただけで、昼を食べてから2時間半は経過してる。

「たまにはいいだろ、と」


洒落た店内の、オープンテラスになっているところへ通されて彼女は嬉しそうにメニューを開いた。
注文をとりにきたウェイトレスに何種類かのケーキと紅茶を頼むと、にっこりと微笑んで「レノさんは珈琲だけでいいんですか?」と尋ねてきた。

「ああ」

甘いものは好きじゃないんだぞ、と。

運ばれてきたケーキやパフェはどれもこれも甘そうなものばかりな匂いをばら撒いて。
それでも、彼女は嬉しそうに食べるから、少し意地悪をしたくなった。
がたり、と椅子を揺らして立ち上がり、俺は彼女の傍に近づいて。

「味見、な」

ぺろり、と唇についた生クリームを直接舐め取った。

FIN



拍手お礼小説2作目。
相手は短銃子。設定は春のカフェラウンジ(笑)
実際そんな事してる人が居たら間違いなく叩き殺す(笑)