ゆっくりと風が流れる。
その風は。『兄』と同じ漆黒の髪の毛を揺らしていく。

「お兄さんに黙っていっていくのかしら?」

そう尋ねた金糸の髪の毛の持ち主に、『兄』と同じ笑顔を浮かべてみせる。

「いいんですよ、たまには。いいお灸になりますでしょ?」
「だけど……暫く、ここには帰ってこない。そうでしょう?」

敵いませんねぇ、と彼女は小さな呟きを見せる。

「まあ、あれです。あの兄が私が国歌錬金術師になる事を許してくれれば、直ぐにでも飛んで帰ってきますよ」

絶対にありえないでしょ?と彼女は再び笑って、背中を向ける。

「リザ=ホークアイ中尉?」
「何かしら」
「兄を…。ロイ=マスタング大佐をよろしくお願いしますね」
「大丈夫よ。決して死なせたりしないわ」

よかった。
小さな荷物一つ持って、彼女は旅立った。


「中尉」
「大佐。いらっしゃっていたなら、顔を出せば…」

そういうロイを制止させるとロイは困ったように軍服を直した。

「顔を見たら色々と文句を言いたくなるからね。……なぁに、直ぐに逢うことになるさ」

遠くなる汽車を見送りながらロイは言う。
いずれ、遠くない未来に思いを馳せながら銀時計を手にして。
彼女もこれと同じものを持つであろう、遠くない未来に。

FIN



拍手お礼小説3作目。
ジャンルはハガレン。ちょうどハガレンを買いなおそうかどうか悩んだ時期でしたねー。
でもやめた(笑)FF−BC−サイトなのに結構反響よかったです。