「あら…」

地面に落ちていた、シルバーの十字架。
それはまるで墓標の様で。

「レノ、待って」
「何だよ、と。ここでの用事は終わったんだから、さっさと行くぞ、と」

何でもないようにレノは言う。
電磁ロッドについた紅い血を、一振りで地面へと還して行く。

「だから……ちょっと待っててってば!別に何十分も何時間も居たいって言ってる訳じゃないの。これを埋めたいだけ」

まだ鎖のついたままの十字架を目線に高々と掲げてみせる。
太陽に照らされて、シルバーが一層光を増し、レノはそれを訝しげに観ていた。

「アバランチのか?」
「さぁ。そうかも知れないし、違うかも知れないわね。
ここにだって、普通に人が居て普通に生活をしている人が居るんだから」

比較的軟らかそうな場所を選んで素手で地面を掘り始める。

「どいてろ、と」

電磁ロッドを収納した状態でレノは地面を抉り始める。
それは掘る、というよりも抉る、という表現の方が的確で。
ものの数秒でぽかりと数センチの深さの穴は顔を覗かせた。

「……有難う、レノ」
「どう致しまして、と」

そこへ十字架を寝かせる。
誰のものかわからない、小さな墓標。
願わくば、この地に安らかな眠りをこめて。

FIN



拍手お礼小説5作目。
任務終了後のレノ散のイメージで。
センチメンタルお嬢。