氷の女神 vol.02
女性と付き合ったことがない訳じゃない。
なのに、こんなに電話が待ち遠しいなんて、一体どうしてしまったというのだろうか。
不意にホテルの一室に鳴り響く、備え付けのものではない、携帯電話の音の調べに身体を硬直させる。
さっき登録したばかりの携帯電話の番号が、表示され、そこに書かれているのは
『』の文字。
「Ciao」(もしもし?)
緊張の所為か、上ずった声で俺が発したのは母国語の、イタリア語だった。
しまった、と思ったときには遅かった。
【…Ciao.】(…こんにちわ)
戸惑った声で返され、俺は息を飲んだ。
【Italiano uno e piu facile del giapponese?】(日本語より、イタリア語の方が楽ですか?)
困ったような声で聞かれ、俺は慌ててそれを否定した。
「に、日本語で大丈夫です!」
電話の向こうで、くすり、と笑った気がした。
最初の10分でこちらから掛け直すと言って電話をしなおした。
…学生の身だし、と断ると本当に申し訳なさそうで。
でも、こっちから掛け直せば長く喋っても相手が気を遣うことはないんじゃないだろうか。
そう思ったからだ。
緊張は直ぐに解けた。
話すうちにいい意味での包容力を感じたからかも知れない。
時計をちらり、と見るともういい時間になっていた。
【じゃあ、明日の三時に】
「迎えに行ってもいいか?」
俺の唐突な要望には戸惑ったようだった。
公園での、男の人が苦手で、という言葉が蘇る。
【迷惑じゃないですか?】
「全然。
Se Lei sorride, guaio pari e con la gioia piu alta.」(貴方が微笑んでくれるのなら、迷惑すら最高の喜びに)
【C'est heureux et acceptations.】(喜んでお受けします)
最後の言葉は何を言っているのか判らなかった。
でも、言葉のイントネーションで何となく拒絶ではなく、肯定を予測して。
俺達は「お休み」の言葉で電話を切った。
To Be Continued
みじかー!!!
久し振りのディーノ夢はディーノの口調がわからなくて困りました。
イタリア男は台詞がクサイと友人から聞いたので、あえてディーノの台詞(イタリア語)はクサくしてみました。
…んー、余り甘くないかな。
因みに最後のちゃんの台詞はフランス語です。ドイツ語と悩んだんですけど…ディーノ、ドイツ語喋れそうなんだもん!