僕は君を魅了する vol.3


(最悪、最悪、最悪!!!)
よりにもよってあんな男に、という思いと。
そして、意外にあいつはモテるんだという事実をは知らされた。
表立って嫌がらせされることはないが、好奇な視線とそしてあからさまな女子生徒からの誹謗中傷めいた陰口に、きゅっと唇を噛み締めながら屋上への階段を昇る。
涙がこぼれ落ちそうになるのをぐっと我慢して真っ直ぐ前を見据え、鍵の開いている屋上の扉を開けると夏の風が一気にの身体を駆け抜ける。
「雲雀恭弥の馬鹿野郎…!!!」
わざわざ出身の小学校よりも遠い中学へ通えるように両親を説得して、中学生という身分でありながら一人暮らしを許可されたのに、またあの時代と同じ繰り返しになるのだろうか。まで巻き込んだことをの両親が知ったら、きっとは転校させられる。
?」
聞きなれない声に「何?」と精一杯の虚勢を張って振り返れば、そこには茶髪のロングヘアの女生徒が後ろに数人の男を連れて立っていた。
「何でしょーか、センパイ」
「あのヒバリが熱上げて入れ込みそうな女が出来たっていうから見に来たのに……。とんだ見込み違いみたいね」
すらりとした身長に、綺麗に手入れされた爪。
雲雀の事を呼び捨てにするあたり、この人は同級生なんだろう。
「あの人が何を言ってるのか判らないですけど、私には一切合財関係ありませんから!構わないで下さい!!」
「そうしたいんだけどさ。……万が一って事もあるじゃない?あのヒバリに惚れられたら何人もの女が泣くことになるワケ。
だから、そうならないように今の内に予防策しておいてあげようと思って」
「惚れる?私があの男に?」
大声で笑いたいのをぐっと我慢して、は目の前の女生徒を軽く睨みつける。
「人の古傷を利用して手に入れようとするような大馬鹿野郎に、誰が惚れるか…!!!」
制服のリボンを外し、スカートのポケットにねじ込む。
「どうせあれでしょ?後ろのおにーさん達を利用して、雲雀に二度と近づけないような身体にしてやろうとか、そーいう事考えてるんでしょ?」
「中々賢い後輩ちゃんじゃない」
(……そんなの、誰が考えても判るわよ…!!)
「何群れてるの?」
屋上の給水タンクの上からいきなり声が響き、びくりと身体を振るわせた。
大きな欠伸を一つし、のそりと起き上がったのは紛れもなく雲雀だった。
学ランの上着を軽く羽織っているせいでよく見えないが、多分、その腕には仕込みトンファ。
「群れてるっていうより、弱いものいじめ?」
「後輩指導よ、ヒバリ」
「それって後輩いじめっていうんじゃないの?
それに。…彼女に手出ししたら本当に噛み殺すよ?」
太陽の光で反射する、トンファに小さく舌打ちしたのがの耳に届く。
彼はやるといったらやる男なのだろう。
ばたん、と派手な音を立ててドアは閉まった。ドアに目を取られている間に給水タンクから降りた雲雀がの隣に立つ。
「お礼は言いません」
「期待してないし」
ふぁ、と欠伸をこぼして雲雀がの首元に手を伸ばす。
「細い首だよね。……折っちゃいたいくらい」
ぞくりとする程妖艶な微笑に思わずがその手を振りほどく。
本能とでも言うのだろうか。このまま首に手を当てられていたら、本当に冗談ではすまないような、そんな事態が待っているような気がして。
「さっき、人の古傷とか言ってなかった?」
「知ってるんでしょ?私の事、調べたって言ってたもんね?」
「あぁ……。あれ、嘘だけど」
さらっと言い放った雲雀にが唖然とした表情をする。
「そんな簡単に人の過去とか調べられるわけ、ないじゃん。興信所じゃあるまいし」
本能的にウソツケ、と毒づく。
多分、この男は知っている。
…私の、過去も、何もかも。

To Be Continued