A blue sky
「天気が良すぎてムカつく」
そういわれても困るんですが……。
思わず私はそう呟く。
「ー、少しは日焼け止めとか塗ろうよー。いくら室内でもこの日差しは天敵だよ」
の言葉に私は首を横に振る。
「私はへーきだよ。赤くなるだけで全然焼けないんだ」
夏の日差しの強い中、炎天下の中に居ても全く焼けなかった。
羨ましい、ってほかの人はいうけど、私から見たらどーでもいいよ。そんなの。
私はもう少し小麦色というか、健康的な色になりたいの!
そういうとは少し笑った。
「あ、山本君だ」
「……山本?何?、好み?」
「そーいうんじゃないけど!……ただ、頑張ってるなー…って」
小さな嘘。
本当は一緒のクラスになってから、ずっと目で追ってる。
気付いたら目で追ってた。
同じクラスのツナ君(…沢田君だっけ?苗字)と獄寺君と仲がいいんだよね。
「目がハートになってるよ?」
「え!?」
「確かに顔はいいからねー。性格もいいけど」
うんうん、とは隣で大きく頷く。
窓を大きく開けてグラウンドで練習試合を行っている野球部を見つめる。
「ここからだとよく見えるね」
「でしょー?」
「でもすっごい怖いんだけど」
何を隠そう。
ここは応接室だ。……あの泣く子も黙る風紀委員長の居る。最も、今日はまだ姿を見ていないところを見るとほかのところで群れ狩り(…こう言ったのはだけど。念のため)でもやってるんだろうか。
「、来てるの?」
がちゃりとドアが開いた。
私の背筋が一気に凍る。私だけじゃなくてもきっと凍ると思うけど!
「やほー、雲雀」
「何見てるの?」
私の存在はスルーですか。
…スルーしてくれた方がいいけど!(何故って怖いから)
実際、スルーしてるわけじゃないんだろうな。ばんばん殺気だった視線が背中に突き刺さってます、ハイ。多分、この視線の意味は「二人っきりになりたいから部屋を出て行け」なんだろうな。
きっとは気付いてるんだろうな。
でも…。
「雲雀、睨まないでくれる?」
硝子に映った雲雀に向かってはきっぱりと言い捨てる。
この人にこんな言い方が出来るのは多分だけだよ……。
「まぁいいけど。何見てるか知らないけど、僕が帰る前に帰ったりしたら噛み殺すから」
「あはははは。判ってるよ」
そういって応接室から雲雀…さんは出て行った。
「お、ホームラン」
長い長い時間が経っていたと思ったのに、まだ数分も経っていなかった。目の前のグラウンドでは山本君がホームランを打って。
その白球は青空へ消えてった。
「好きなんでしょ?」
「へえ!?」
「山本の事、好きなんじゃないの?」
あー……うー……。
窓の桟に手をかけて、真っ赤であろう自分の顔を風にさらすと少しだけ、ひんやりした。
「好き…かも」
「じゃ、積極的にならなきゃねー」
「無理だよ!同じクラスってだけでも神様に感謝だよ!」
目があったら絶対死んじゃう。
話しかけたら、きっと平等に放し返してくれるんだろうけど!
「……特別になりたいなーって思っちゃうもん」
雲雀さんを待つから、御免ね。と謝ったを応接室において、私は先に帰った。
「おかーさん、ちょっとコンビニ行ってくる」
「ついでにパン買って来てー」
「はぁい」
帰ってから気付いた…。
シャーペンの芯とノートがない。
財布を持って近くのコンビニへ。近くの、といっても歩いて楽に30分はある。学校の近くだから、学校の帰りによれば帰り道で済んだのに。
コンビニの店員のお姉さんがやけに愛想良くて。接客業は大変なんだなーとか思う。
目当てのシャー芯とノート、それに頼まれたパンとカロリーメイトを買って私はコンビニを出る。
夏の夜だというのに少し涼しくて、もう秋がそこまで来ていることを肌で知る。
「?」
「へ?」
学校の方から声がして、私は思わず素っ頓狂な声を出した。
「何してんの?」
「……こ、コンビニにね、買い物」
スポーツバッグを肩から提げた山本君がそこにはいた。
「部活?」
「そ。来週、試合があるんだよ。監督張り切っちゃっててさー」
「見てた。今日、ホームラン打ってたね」
どうした、私!
こんなに素直に言葉が出るなんて!
「いつも応接室から見てるよな」
「ああ、うん。の彼氏がねー、雲雀さんで」
イツモオウセツシツカラミテルヨナ?
「何で知ってるの!?」
「そりゃ、丸見えだし」
しかも私さっき見てるの、肯定しちゃったよ!!
「………俺は少しでも自惚れていいのか?」
「はい!?」
いやいや、落ち着け、自分の心臓。
絶対目の前に居る山本君は山本君じゃないよ!
「?」
「えーと………えーとね」
何て答えればいいんだ。
私も好きです?
でもほら、別に山本君は別に私に対して好きとか言ってないし!
「明日、もう一回言うから」
「は!?」
今なんていいました!?
ちょっとパニックになってる自分がわからない。
「じゃあ、また明日な!」
爽やかだけど。
確かに爽やかだけど!
……これは夢だ、きっと。
今日も相変わらず応接室に私はと居るわけで。
放課後、来週試合があるって言ってた山本君たちは一生懸命部活をやってた。
マホガニーの高い机の上にあるのは昨日買ったカロリーメイト。
「ねえ、はさ、この距離から相手の顔、判別できる?」
「無理」
即答したよ、この人。
「そうだよね」
「何?どうしたの」
「昨日、山本君に夜偶然逢ってさ。応接室から見てるの知られてて、自惚れていいのか?とか言われた」
うん、間違ってないよね。
「脈ありなんじゃないの?」
「わかんない」
今日もう一回言うって言った事は言わないでおいた。
…もし、からかわれてたなら哀しいし。
マホガニーの机の上の携帯が震える。
「、メールだよ」
「うん」
判ってる。
でもさ、でも。
山本君が次バッターなんだよ。メール見てる間にもし終わっちゃったらどうするの!
そう思いながら携帯を開いて。
私は慌ててグラウンドを見る。
前のバッターは終わって、山本君がバッターボックスに立ってた。
バットとボールが当たって、いい音がして、白球がまた青空に消えた。
こっちを見た山本君に(正確には見たのかな?)手を振る。
それを見て、下で、手を振ってた山本君が。
ゆっくりと一塁ベースに向かって走り始めた。
【ホームラン打ったら俺と付き合って】
FIN
…………一度死んできます………!!!
純愛って難しいんですよ!!!!
2006.08.14 up