ツォンに頼まれて出かけた商店街でたまたまやっていた福引。
お使いは簡単なもので書類を一部ポストに投函するだけでよかった。後は頼まれたおやつを買って、二回分の福引券が手元にあってー……。
「と云うわけで、明日から出かけるぞ、と」
偶然、連休の休みを一緒に取れることになったにレノが唐突に言う。
仕事柄、休みを一緒に取れることなどなく、カップルらしいことをしてあげられなかったのを悔いていた矢先だった。
「え?え?でも何処にですか?」
「ゴールドソーサー、二泊三日だぞ、と」
にっと笑ったレノの口許にはしっかりと…。ゴールドソーサー二泊三日無料ご招待、総てのアトラクション利用可。と書かれたチケットがあった。
There is a test to get over it……?
「うわあ……」
何度か来たことはあるが、思わずは感嘆した。
レノはいつもの黒スーツを着崩しているがは違う。
昨夜遅くまでどの洋服にするか吟味に吟味を重ねていた。
タークスの面々には教えていない。教えればどうなるか目に見えているからだ。に気付かれないように周囲を見渡して、知り合いの顔がないかどうかを確認する。
「よし、行くか、と」
「はい!」
が、ちょうどその頃。
同じくゴールドソーサーでは事件が勃発していた。
監視カメラのある部屋が占領され(正確には金で買収され)ゴールドソーサーの制服に特殊インカムをセットした面々が連なっていた。
「甘い…甘くってよ、レノ…。私の情報を甘く見てはいけませんわ」
ぎぃ、と椅子に座り、足を組んだ栗色の髪の毛をポニーテールにした女性が不敵な笑みをこぼす。
「……こちらで彼と私が指示を出しますわ。任務はレノの野望を阻止すること!OK!?」
「ラジャー」
彼女の好きもここまで来ると凄いな、とぽつりと呟く。
「じゃあ、配置について頂戴。
…いいこと?くれぐれもばれるんじゃなくってよ!?」
隣で子供のようにはしゃいでいるを見て思わずレノは頬が緩んだ。
今までデートらしいデートをしてこなかったわけではない。…が、タークスは休日が休日としてあるような部署じゃないため、休日でも平気で呼び出されるような部署なのだ。
三日間。
たった三日間とはいえ、邪魔されないとわかれば、レノも思わず自然と笑いがこみ上げてくるというものだ。
「……ま、あいつらだってここまでかぎつけてはこないだろ、と」
「何か言いましたか?レノさん」
小さな声で呟いたレノを不思議そうな顔で覗き込んで、はきょとんとした顔をする。
「なんでもないぞ、と」
にこやかに微笑んでレノはの手をとった。
しかし、その平和も数時間後には打ち壊されることになる。
陰からばれないようにゴールドソーサーの制服に身を包んだがインカムに小声で話しかける。
管理室に居るに直接通じるもので、困ったときは即相談、を守っているのだ。
【こちらA班、】
【どうかして?アトラクションには確かに二人で入っていったけど…何か問題でも起きて?】
【が一緒過ぎて妨害できるチャンスがないんだけど。どうする?】
【にばれたら元も子もないのよね……。取り合えず傍観していて頂戴。もしレノが変なことしようとしたら即なぎ払いなさい。…一般人のフリをして!!】
【……リョウカイ……】
ゴールドソーサーの制服を着て一般人…!?
とが思わず顔を見合わせて苦笑した。
モニター越しに見るの目にもの目にも、二人は仲のいいカップルに見えて、時折邪魔する必要のないような、そんな焦燥感に襲われる。
だが。
ここで諦めては名が廃るのだ。何が何でも成功させなければならない。
レノもレノでまるっきり無警戒でと肩を並べて歩いている。
願わくば、このまま何事もないように。とは祈る。
「すごーいひろーい」
はしゃぐを見てレノが思わず口角をあげて笑う。
「、疲れただろ、と。先に風呂使えよ、と」
モニター越しに聞こえたその台詞に思わずが噎せる。
「あんのケダモノ…!!」
インカムのスイッチに手を伸ばしかけ、一瞬考え、そして何故かは携帯を手にした。
手馴れた操作で電話をかける。
モニター越しにレノが鳴り響く携帯を手にした。
「はい、もしもし、と」
【レノ?ごめんなさいね、休暇中に】
「いや、大丈夫だぞ、と。ところでどうしたんだ、と」
【ツォンさんがね、休暇前に出してもらった報告書で一枚ページが足りないものがあるんですって】
「ハァ!?ちょ…まさか、今から出しに来いとか言うんじゃないんだろうな、と」
【代わりに私が出してあげてもよくってよ】
最初からそんなものはない。
確かに報告書はレノは提出したが、今頃その書類はツォンからヴェルドへ渡り、今頃はルーファウスの手元にある頃だろう。
【商店街で当たった御招待券、どうせと一緒なのでしょう?】
「なっ、しっ」
【たまたま商店街に行ったら教えてくださいましたの…親切な方が】
正確にはツォンがレノに渡しそびれた手紙をとが持って追いかけ、その当選した瞬間を遠くからが発見した、というのが事実なのだがあえてそれは口には出さなかった。
【に何かしたら……】
「わーった、判ったぞ、と!判ったから書類お願いします……、と」
それだけ言うと一方的にレノは携帯を電源ごと落とした。
の耳に空しくツーツーという音だけが残り、その様子を見ては口許に手を当てて笑いをこぼした。
「…役者だね」
「そぉ?」
けろっとした表情ではにこやかに微笑む。
結局、レノは宿泊する二日ともソファで就寝した。
レノは見てるなんて知らないんだから言わなければ判らないのに。と、三日目、タークスの面々を引き上げてモニターのスイッチを切ったがそう呟いたのはだけが知る。
「レノさん」
「あ?」
「楽しかったです。また誘ってくださいね」
ホテルのロビーでチェックアウトをしたレノを迎えてが言う。
「あぁ、また来ような、と」
の分の荷物も軽々と持つとレノはホテルの出口を指差して、行くぞ、と。と呟いた。
ぐっとがレノの腕を引っ張る。誰も居ないことを確認して、ちょっと頬を赤らめながら、がレノの頬に軽いキスを落とす。
「お…お礼です」
「…!?」
数日後
「と云うわけで、別に何もなかったみたいですわ」
白亜の建物の中の一室で分厚い書類をソファに座っている青年に手渡したがにこやかな微笑を称えた。
窓から差し込む光が漆黒の髪に反射する。
「悪かったね、こんなことを頼んだりして」
「いいえ、そんな事…」
書類の束をファイルに閉まって青年がぺこりと頭を下げる。
「何時でも仰ってくださいな。…他の人の頼みごとなら指一本動かしたくないですけど、貴方の頼みなら何時でも動いて差し上げますわ」
「はは……流石に似ているね」
困ったように笑いながら青年は言う。
「じゃあ、私はまだこれから任務がありますので、これで失礼致します」
ソファから立ち上がり、愛用の散弾銃が入っているケースを持ち上げるとドアの方へと向かう。
「御機嫌よう」
「武運を祈っているよ」
短い言葉を交わしてはドアの外へと出て行った。
FIN
13000を踏みぬいてくださりました河川様からのリク、です。
っていうか、こんなんで本当に申し訳ない…!!最初、だかだかだかーっと書いたんですが、何となく自分の中で納得いかなくて二転三転してるうちにこんなになってしまいました…orz
最後の彼は彼です(笑)きっと判ってくださるはず…!!(ヲイ)
こんなへっぽこですので、何時でも返品可です…!本当に申し訳ない…!!
2006/05/03