Only you are necessary. Only you want it
鼻歌混じりに路地裏を急いで歩いているレノがふっと立ち止まる。
隣を歩いていたが立ち止まって、不思議そうな顔をした。
「どうかして?」
「や。何でもないぞ、と」
にっと笑ってまた同じように鼻歌混じりになったレノを不思議そうな瞳で見つめて、変な人ね。と小さな声で呟いた。
同じタークスに所属になって、レノから先に告白した。良家のお嬢さんで世間知らずなところもあるが、それ以上に愛しくて、可愛くて、仕方ない。
「レノ、レノ」
くい、と袖を引っ張られてレノは鼻歌を止め、の方を見る。大きな瞳に吸い込まれそうになる。
「どうした、と」
路地裏の隅を指差している。
「……、お手柄だぞ、と」
決して路地裏を遊んで歩いていたわけではなかった。
目当ては、反神羅組織の一員をとっ捕まえること。
見たことのある制服にレノは電磁ロッドを握り締め、に、ここは頼んだとだけ言って突っ込んでいった。
休日の携帯にいきなりのメール。
いや、いきなりだから携帯なんだけども。予告してからメールや電話が入るような便利な携帯があったらほしいもんだ、と。と呟きながら、レノは着信したメールを開いた。
どうせ、主任かツォンさんからだろ。
まだ眠くてぼんやりとしている頭でそれを開くと、一気に眠気が吹き飛んだ。
お昼ごはんがまだだったら、一緒に食べませんか?作りすぎちゃいました。
の文字にレノは慌てて返信する。
やっぱり、携帯の着信、からのだけ変えればよかった!と思いながら、それでも冷静を務めて。
送信しました、のディスプレイになってから数十秒後に、
了解しました。じゃあ、待ってます。
の文字を確認して待ち受け画面へと戻す。
普段、休日が重なることが少ないため、こういう機会は逃したくない。
急いで着替えて部屋を出て、バイクにまたがる。
行く途中、花屋で花を買っていこう。
そんな想いが交差する。
今まで誰かの為に花を買うという事がなかった。自慢じゃないが、女は切らせたことがなかった。毎回目撃されるのは別の女だったが。
それが自分から惚れたとはいえ、このザマは何だ。と自分自身でも思う。
だけど。
でも。
……そんなもどかしさが凄い新鮮だった。
普段の俺を知っている人間ならきっとせせら笑うに違いない。
そんな温い恋愛、レノらしくないってな。
バイクをのマンションの駐車場の所定の位置に停めるとさっき買った花束を肩に乗せてエレベーターに乗り込む。
最上階の二部屋しかない部屋の、手前側にある景色がいい方には住んでる。
レノは一度だけチャイムを鳴らした。
暫くして、鍵の外される音。
ドアが開いての顔を確認すると持ってた花束を手渡す。
「綺麗…。いいの?戴いて」
「戴いてもらうために買って来たんだぞ、と」
上がって。
そういわれて中に入ったレノの鼻腔をいい匂いがくすぐる。
「…あのね、あのメールね」
「ああ」
「本当は来てほしいための、口実、なの。じゃないと、レノ、きてくれないんじゃないかって思って」
ぱたぱたとスリッパの音がなる中、レノはぼんやりとその声を聞く。
「一度も来てくれたこと、ないでしょう?だから…」
「来ていいのかなって思ってたんだぞ、と」
俺とお前じゃ、身分が違いすぎるだろ。
その言葉をレノは飲み込む。
彼女にそんな事を言って何になる?そう思いながら。
「ちょくちょく来ていいのに……」
ぷぅ、と少し頬を膨らませるに思わずレノが頬を綻ばせる。
可愛い、と思う。
「いつも、そのうちそのうちって言って全然来てくれないんだもの……」
寂しいじゃない。
ぽつり、と呟いたを後ろから抱き締める。
「今度からちゃんと来るからさ、と」
だから、機嫌を直してくれ。
ゆっくり後ろ手で鍵をかけて耳元でレノはそう呟いた。
FIN
14200を踏み抜かれました、珠璃様からのリクエスト。
ヘタレ風味なレノとお嬢。
……ヘタレてねええええ!!!!!(あせあせ)
本当に申し訳在りません…こんなへたれてないものを差し上げようなんて……orz
返品いつでも可ですので〜〜〜(あせあせ)
2006.05.13