In my may sacrifice what in order to obtain you.


ルーファウスの朝は早い。
流石に日の出とともに、という訳ではないが、目覚めはそれに近かった。
何時からだろう。
頭のところで規則正しい電子音を鳴らしている時計を、時計を見ないで停める。ちょっと前なら、停めてしまった状態で数分間ベッドの中で過ごしていたら間違いなく二度寝していただろう。
それがどうだ。
今では目覚まし時計が鳴る数秒前から起きれるようになっている。
ゆっくりと、優雅な仕草でベッドから出るとそのまま遮光カーテンを開く。暗かった部屋に一気に太陽の光が注ぎ込まれ、ルーファウスの頭は一気に覚醒への階段を上り詰めていく。


「おはようございます、副社長」
「ああ、ツォンか」
いつもと変わらない純白のスーツに身を包んだルーファウスが神羅カンパニー総務部調査課・通称、タークスの本部を訪れたのは始業の一時間前だった。
ヴェルドかツォンか。
報告書で大体一番最初に来るのはこの二人のどちらかかというのはルーファウスも知っていた。
しんとした空気。
「何かあったんですか?副社長」
どかりとソファに座ったルーファウスの前にツォンが珈琲を差し出す。
「何か用事がなかったら来てはいけないのか」
むっとした口調でルーファウスは言う。
「いえ……そうではないんですが……ここ数日、ずっと来てらっしゃるようですので……。タークスが何かしたんじゃないかと……」
特にレノとか。
という言葉をツォンは飲み込む。
タークスの中で何かやりそうな奴といえば、レノくらいしかツォンには思いつかなかった。それはそれで寂しい限りだが、そう見えても一応、ツォンはレノの事を信用している。
「いや、ちょっとな…」
「副社長」
怪訝そうな顔をしているツォンの後ろからヴェルドの声が響いた。
なら今日も任務で泊まり込みです」
「……そうか。それは残念だ」
かちゃん、と小さな音を立ててカップはソーサーの上へと戻った。
そのまま、空の、まだ少し温もりの残るカップを残してルーファウスは副社長室へと戻った。
あらかじめ決められた時間に空調が入るように設定されている部屋は誰も居ないのに仄かに暖かい。
それは単に人工的な温もりではあるのだが。
壁にかけてあるカレンダーには月の途中の一昨日から×印がついている。二ヶ月で一枚の紙に印刷されているカレンダーは先月の分にも何個かの×印と。先月分には紅い○印が何個かついていた。
×印は言わずもがな、の泊まり込みだったり、日帰りでも帰りが遅い日。
反対に○印は偶然でも必然でも、逢えてデートが出来た日。
先月だけ見ても、その数はイコールでは繋がらない。むしろ、×印 > ○印で圧倒的に×印が多い。
付き合っているとはいえない、この状況で。
ゆったりとした作りの椅子に座って目を閉じても思い出すのは同じシーンばかり。
コンコンと小さな音のノックに、不機嫌そうな声でルーファウスは返事を返す。
「誰だ」
「ご機嫌斜め?ルーファウスったら」
滑らかに開いた扉の向こうに居たのは紛れもなく。
栗色の髪の毛に黒いスーツを綺麗に着込み、手にしたショットガンのケース。
。どうしたんだ。任務だとさっき」
「そうよ、任務よ」
「しかも泊まり込みだと聞いた」
「そうよ。泊まり込みの任務だもの」
副社長のデスクの前に置かれた豪華なソファセットのソファに座るとはびっくりした顔をした。
きぃ、と小さな軋んだ音を立ててルーファウスは椅子を回すとデスクの上に肘をついて腕を組んだ。
口許が組まれた指で見えないが、何故か怒っているらしい。
「行かなくていいのか。こんなところで油を売っている暇が……」
「行っていいの?」
意地悪っぽく見ては言う。
「任務なのだろう?」
「………」
堪えきれないというようには口許を隠して笑いを押し殺しながら溢して行く。
!!私は真剣に…」
「今日の私の任務は貴方の護衛よ、ルーファウス」
「……は!?」
一通り笑ってすっきりしたのか。否、ルーファウスの驚いた表情が見れたからヨシとしたのか。
笑いすぎて涙が出てきたらしく、その涙を指で拭ってはルーファウスを見つめる。
「忘れちゃったの?ルーファウス。今日は社長の誕生パーティでしょう?」
「ああ…忘れてた」
自分の父親の誕生日くらい覚えててよ。
そういっては笑う。
「確かに護衛をよこすとツォンからは報告受けていたが、何故なんだ」
「さあ?知らない。でも私としては好都合なのよ、ルー」
「好都合?」
「そ!
私もどうせパーティの参加者ですもの。ね?タークスが入り込んでるなんて誰も思わないんじゃなくて?」
テーブルに手をついて立ち上がるとはにっと笑う。
「と云うわけなの。理解してくれたかしら?」
「ああ、理解した」
妖艶に笑って。
×印をつけようと思っていた今日の日付に。
思い切り綺麗な赤で○印をつけた。

FIN



ルー様とお嬢。
やってみたかった内容だったんですが、意外に面白かったのでまたやったらOTHERに突っ込むかも知れません。
一番絡ませやすいのはやっぱりレノだと気付いた瞬間、とも言う(笑)

LAST UP:2006/05/26