アポロ (BC学園ver)
「ん?…何か甘い匂いするな、と」
理事長室に入ってきたレノが理事長室に漂う甘い香りに周囲を見渡す。
「レノ先輩も食べます?」
つい、と差し出された箱から出されたチョコレートに懐かしい表情をしてそれを受け取る。
口の中に放り込むと体温で溶けていくチョコレートと、甘いチョコの香り。
「まだ売ってるんだな、と。これ」
「私もこの前コンビニで見つけて懐かしくなっちゃったんですよー。パッケージがちょっと変わったんですよね、これ」
そういってレノにはアポロチョコと書かれた箱を手渡す。
中身はまだ結構入っているらしく、ずっしりとした触感。
「あ、あげますよ」
じぃっと食い入るように見ていたレノを勘違いしたらしく、は言う。
「懐かしくていっぱい買ってきちゃったんですよ。
後はさんにもあげようと思って」
「じゃあ、有難く貰うぞ、と」
机の上には苺味とブルーベリー味が乗っている。
ポケットティッシュを一枚取り出して上にあける。いきなり拡がる甘い匂いに包まれながら、真剣にレノは何かを探している。
「お。あったぞ、と」
「何探してたんですか?」
ひょい、と手元を除くとそこには配色が逆になったアポロチョコがつかまれていた。
手、出せ。
というレノの言葉に素直に掌を広げるとその上にころんと転がされた。
「何ですか、これ」
「味が逆になってるアポロチョコが入ってるとイーコトあるんだって、と」
巷の女子高生が騒ぎながら喜びそうなネタには目をきらきらとさせる。
「イイコトって、どんなことでしょうか」
「んんー……にとってイイコトだからな。にとってイイコトって何だ、と」
少しだけ考えて。
はそのアポロチョコをじぃっと見つめる。
そしてそのうちに、意を決したかのようにレノを見た。
「私の知人が皆、幸せになってくれることです」
の中学時代の知り合いが聞けば、甘っちょろいことを言ってる、だの、優等生の答えだ、とか何とか言うのだろう。
レノは何故か直感的にそう思い、それでも自分達の幸せを願ってくれる目の前の少女に尊敬の意を抱いた。
「じゃあ、幸せにしてもらおうかな、と」
もう一つ隠れていた、逆配色のアポロをレノは摘むとにっこりと笑う。
それをの口に押し込む。
「好きだぞ、と」
もごもごとアポロチョコを食べていたの動きがぴしりと固まる。
「アポロチョコより甘いものをくれてやるから覚悟しとけよ、と」
それだけ言って。
の金色の髪の毛をくしゃくしゃと乱雑に撫で回して、立ち上がり、レノは理事長室を出て行った。
暫くの間、タークスの中でアポロチョコは密かなブームになっていたが、それを見てが思わず赤面した理由をレノだけが知っていた。
アポロ FIN
ポルグラでお題・アポロ。
アポロ=宇宙船、という概念を敢えて捨ててみました(笑)
アポロ=某一流企業のマーク、という思いもありますが……。でも、やっぱりアポロっていったら私の中ではアポロチョコだったり。
本当はアポロ先生(ツォンさん)も書きたかったんですが、時間の都合により棄却されました(笑)