それは僕の役目だから。


の作ってくれた離乳食をようやく起きてぐずり始めたに食べさせる。
食べさせるのはいつも僕の役目で、どうやら味もよかったらしく、何回かに分けたうちの一回分を綺麗に食べつくした。
食べてしまえば後は眠るもので(というより、がそうなだけなのかもしれない)再びすやすやと寝息を立て始める。
に電話してみようか。具合はどうか、って。
だけど。
………学校に連れてきてるのばれたら、殺されるだろうなぁ。
「……は」
に噛み殺されるのが怖いなんて、
甘くなったものだね、僕も。



「何かがいないと変な感じっすね〜」
いつもの昼の光景。
の隣はのポジションだったしなー」
それでいいのか、彼氏。というツッコミが聞こえてきそうな言葉には小さく頷く。

……言いたい。
……物凄くばらしたい。

敢えてにしか言わなかったのは多分、彼らを信頼していないからじゃなく、彼らを失うのが怖いからだ。
壊れるような友情じゃないと信頼していても、怖いのだろう。

……この際、が産んだのは内緒にして雲雀さんが子供に笑いかける事実をばらしたい。

「お゛はよー……」
「おはよーっていうか、今は昼だからこんにちわだろ」
ソーメンパン(:美味しいのだろうか)を齧りながら獄寺が笑う。
「ていうか、獄寺、私の机用意しといてよねー」
座るというよりは倒れこむに近い表現だっただろうか。
空いていた席に座るとようやくが反応した。凄く自然に溶け込んだ、その動作に思わず違和感を感じていなかった。
「何してるの、!」
「何って熱下がったから学校!」
「そんな真っ赤な顔で?」
「うー…」
真っ赤な顔をして机に突っ伏すの耳元に口を寄せる。
「…雲雀さんなら応接室よ」
「え?…あいつ、来てるの?」
こくり、とが頷く。
「……は?」
「一緒」
がたり、と机を鳴らした。
大きな音だったのだろう。周りの生徒が驚いた表情をしていた。
「何処行くんだよ?」
「応接室!!」
「応接室より保健室だろ!」
獄寺の鋭いツッコミに中指を立てたのを見せた後、べーと舌を出して教室を出て行った。


貰ってた合鍵で応接室のドアを開けて中へ入るとそこには雲雀が居た。
「恭弥ァッ!!」
「げ、
「げ、じゃないでしょ。げ、じゃ!は!?」
ドアを閉めて鍵をかける。
ソファですやすや寝ているを見て思わず膝の力が抜ける。
「何でがココにいるのよ!」
「うちの親も旅行中」
「家に戻れえええ!!!」
「家に戻って、風邪がうつるって言うのはだと思う」
くん、と鼻を鳴らしては匂いの元を追跡する。
ソファの前に置かれたテーブルの上においてある、調理済みのベビーフード。
「これ」
が作ってくれた。流石家庭科部だよね」
いやいやいやいや、そうじゃなくて。
がっくりと崩れ落ちた状態でがくらくらする頭を抑えて床に転がる。
きちんと掃除された床の上はひんやりとしている。
「…、保健室行かなくて平気なの?」
「平気な、訳、ないじゃない…馬鹿!」
雲雀が歩み寄り、の身体を抱き上げる。
かなり熱い。
無茶をしてここに来たのだろう。
「ばれたらどうするの…!?」
「言ったはずだけど?が出来た時、僕はに言ったよね。
たとえ、ばれても僕はを護るだけの力は持ち合わせているって」
にこり、と雲雀が笑う。
流石に熱のあるに何かする気分にもなれず、子供をあやすように背中を軽く叩く。
「……馬鹿」
思わずにやけそうになるその表情をばれないようには雲雀の肩口に顔を埋める。
おずおずと背中に回された、力ない腕を感じながら。
(だって…それは僕の役目なんだよ、
静かに、この時間が止まることだけを祈っていた。

To Be Continued



短いけどとりあえず更新…!

2006.10.24 UP