01.A dreamer

ダンッダンッ!
『的中率98%』
狭い射的訓練施設の中に木霊する激しい銃声。20メートル程離れたその場所にある、人間を象った黒い的に的確に弾を撃ち込んでいる一人の女性。
腰まであるであろう長い、少し色素の薄い金色の髪の毛を無造作にポニーテールにした女性。
 
タークスに所属する一人。
銃声を遮るヘッドフォンをし、鼻歌交じりでどんどん弾を消費していく。銃を扱っている右腕がぴりぴりと痺れる感覚が好きだった。普段は重たい散弾銃を使用しているが、片手で扱える銃もは色々な意味で好きだった。
(…そういえば今日の夕飯何にしようかしら)
ふと集中力が途切れた。
ガァンッ!
『外れました』
ヘッドフォンの中に響く、容赦ない機械の声はを落胆させるのに充分だった。
「…ちぇ」
自分の中の自分ルール、外れたら即刻訓練禁止。と決めているので、仕方なく彼女はヘッドフォンを外した。下らない考え事をしてしまった自分を恥じる意味もこめて、だ。
「んー…」
壁に掛かっている時計を垣間見るとゆうに一時間ここに篭っていた事になる。消費された弾達の数を計算して後日請求書が回ってきたりはしないかしら。とつまらない考えを起こしながら、は使っていた銃を棚の中へ戻した。
「お。
「レノ」
「もう終わったのか、と」
真紅の髪の毛にゴーグルをつけ、独特の口調で喋る彼はタークスでナンバーワンのスピードを誇る。
「夕飯のおかず考えてたら外しちゃったわ。最悪な気分よ」
「ふーん」
今までが使っていた銃を手に取るとレノはその位置から的に向かって発砲した。
鼓膜を劈くような鋭い銃声がし、はレノと的を交互に見た。
「案外難しいんだな、と」
「……あ、あのねぇ!?急に撃つ人が居て!?鼓膜が破れるかと想ったじゃないの!」
「実戦じゃヘッドフォンなんてつけないだろ、と」
「そりゃ…確かにそうだけど…!」
実戦は殆どが屋外だ。屋外じゃなくても、こんな完璧な防音壁に囲まれたところではまずどんぱちしない。つまり、音は拡散される。その上、広い場所。
「ああ、そうだ。忘れてたぞ、と」
まだ言い足りないというの口を人差し指で塞ぎ、黙らせるとレノは楽しそうな表情をした。
「なぁに?」
「明日から俺と一緒にお仕事だぞ、と。嬉しいか?」
「はぁ!?」
「はぁ?じゃなくてだな…ちょっと遠くに行くんだぞ、と」
「何で私が…」
「お目付け役なんだな、と。文句があるならルードに言うといいぞ、と。ルードがツォンに言ったんだぞ、と。俺一人で行かせたら、半年は帰ってこないだろうってな、と」
けらけらと楽しそうにレノは笑う。
わざとらしくため息を一つつき、はレノの腕に腕を絡ませた。
「そぉね。これから夕飯の買い物付き合ってくれるなら、考えてあげてもよくってよ?」
「じゃあ、その夕飯、ご馳走になっていいってことか、と」
「レノの嫌いなものにしてあげるわ。感謝なさい」
足元においてあったの荷物を当然のように持ち、レノは楽しそうにと出て行った。
カラン、と軽い音を立ててさっきレノが放った弾丸が的から取れて的の下にころころと転がった。

To Be Continued