10.Still survive you for "freedom"


「ん……」
悪夢のような1日から解放され、はまだぼんやりとしている頭を軽く振ると慌てて飛び起きた。
あの後、瑠璃を絶対に手放さないというようにきつく抱き締めたは、瑠璃と一緒に実家へ戻ってきた。
父親は驚いた表情を見せたが、何も言わずにと瑠璃、そしてレノのために寝室を用意してくれた。
「…っ、お母様っ」
「おはよう、
窓ガラス越しに差し込む朝日にと同じ、栗色の髪の毛がきらきらと反射し、眩しい。
いてくれた、と思わず安堵の溜息を漏らす。
「…よか、った」
「何が?」
ベッドの端に座ると瑠璃はサイドボードの引き出しの中から櫛と髪ゴムを取り出し、の髪の毛を梳かし始める。ゆっくり、ゆっくりと絹糸のような髪の毛を丁寧に梳かす。その仕草になんともいえない表情をしながら、は大人しくされるままになっていた。
「お母様が…また、いなくなったらって…思って…」
「…勝手にいなくなったりなんかしないわ、。もう逃げるのはやめるの。例え、数年の命だって足掻けば数年…ううん、それ以上に延びるかも知れないじゃない?今まであの人や貴方を哀しませた分、しっかり返していかなくちゃね」
鼻腔をくすぐる紅茶の香りには眠っていた意識をゆっくりと取り戻していく。
琥珀色の液体を喉へと流し込んでいくと乾いていた喉が徐々に潤されていく。
高い位置でのポニーテールに瑠璃は満足そうな表情を浮かべ、自分の髪の毛を三つ編みにする。飲み干したカップをソーサーに戻し、サイドボードの上へおくとはベッドから出、クローゼットへ向かう。
中には黒いスーツがかけてある。
その一枚を手に取り、白いワイシャツに袖を通し、黒のスーツを身に纏い、同じく黒いネクタイを締めた。
、私も…神羅へ行きたいのだけど…いいかしら?」
「いいんじゃないかしら。……きっと驚く人が大勢居ると思うけど」
くすくすと楽しそうには笑った。
まだ寝惚け眼のレノを無理矢理食堂へ引っ張り出すとレノは不機嫌そうに、でも、少し嬉しそうな表情を浮かべていた。


神羅ビルの中はとてつもなく広い。
「後でタークス本部にも顔を出すわ。ツォン君によろしく言っておいてね」
神羅ビルのエレベーターの中、と瑠璃とそしてレノしか居なかったのだが、いきなり瑠璃は途中の階で降りた。
閉まる扉の向こうで瑠璃がそう言って手を振る。
「追いかけないんだな、と」
「勝手に居なくなったりしないって約束してくれたもの」
だから、大丈夫なの。
気丈にそう呟いてはにこりと微笑んだ。

都市開発部門。
そう書かれたプレートの扉を開く。
綺麗に掃除された部屋の奥に、目当ての人物が座っていた。
リーブ=トゥエスティ。
「どちら様です?ノックもなく」
「久し振り、リーブ君」
「………瑠璃!?瑠璃やないか!」
緊張した口調を一変させ、リーブは砕けた口調で瑠璃に近寄る。
「何処ぞで見たことあると思ったら……そや、タークスの君にそっくり……って当然やな。あっちもで瑠璃もや」
昨日の一件はリーブの耳にも当然届いていた。
神羅の中で騒ぎが大きくなっていないのは、偏にの名前とルーファウスの口ぞえがあったからで、それは瑠璃もよく判っていた。
だからこそ、今日ここにこうして来たのだ。
「…瑠璃が入社したときと今と全然変わらんなぁ…」
「そーお?一つだけ変わったところがあるわよ」
「何や」
「内緒」
入社したときと同じ、微笑を浮かべとる。
小さな声でリーブが呟く。
入社して間もなかった頃も、君はこうしてここで笑っていた。
あの時と全く変わらないその微笑みは。
………あの頃の記憶を、
引き出させる。


To Be Continued