狂犬につき、躾は不可能!?
「晋助様ァァァッ!」
「ねえ、晋助様!!」
朝帰りで(若干酒の呑みすぎと遊女の抱きすぎで)頭も腰も、兎に角身体中がダルイ俺の耳に飛び込んできた、五月蝿い二人の声。
叩っ斬ってやろうか。
何て思って刀を手に持つ。
「また朝帰りですか、何が気に食わないんですか、ねえ、言ってください、直しますから」
「アンタがウザいんスよ!」
「はー……話なら後にしやがれ。俺ァねみぃんだよ」
俺はダルイ身体を引きずって寝所に入る。
しっかり布団が敷いてあって。
中には寒くないように、っていう心遣いなんだろう。
あったかい湯たんぽ(こりゃだな)
枕元には水指。
「!」
「何ですか、晋助様」
さっきまでまた子と騒いでた姿なんて微塵も感じさせない姿で、盥に洗濯物を入れて中庭を歩いていたを手招きで呼び寄せる。
「これ、お前か?」
「へ?」
「湯たんぽ」
「ああ!まだまだ寒いですからね。晋助様には風邪ひかれたら困りますし」
ざばざば、と洗濯物が水に浸っていく。
まだ寒いのは俺からお前への台詞だろォが。
「ちょっと待て。まだ熱いじゃねェか、これ」
温もり、何て言うレベルじゃない。
この湯たんぽは、ついさっき入れられました、っていうほどの暖かさで、布団の中にくるまれている。
「ああ、冷めるたびに入れ替えてました」
何でもないんです、そんな事。
そういう風に言葉を紡いで、は冷たい洗濯物を何でもないように洗い出す。
「先に寝てろ。湯たんぽ何ざなくても俺ァ、風邪何かひかねェよ」
「ダメなんですよね、性分みたいで。…貴方がこの屋敷に居ないのに、私一人眠るわけにはいかないみたいで」
何でしょうね。私は貴方のタメに生きている訳じゃないのに。
でも、私は貴方のためだけに生きているみたい。
「……朝帰り、控えてやるから、少しは寝やがれ」
「控えてやるから、というより、自重していただきたいです」
「判った、判った」
我乍ら馬鹿みたいだと思う。
それでも、結局今日の夜から出歩くのも控えて、朝帰りもしなくなるんだと思うと、少し笑えて来た。
FIN
(2007/02/20)
高杉!高杉!エロボイスだし、高杉カッコいいと思います!