I was deceived from a beginning


は何処へ連れて行かれたのか…相手は何か言ってたか?」
に手当てされながらレノは茉莉に尋ねる。
ふるふると茉莉は首を横に振る。
「あ、でも…銃を左手・・で扱ってました。俺もサウスポー何で銃身が食い違ったので……」
部屋の隅では飛がぎゃんぎゃんと電話口に向かって吼えている。
「兎に角!すぐ来てくれ!茉莉が怪我して、俺様、救出に行かなきゃいけないし、……ココだって危ないんだよ」
「なぁなぁ、茉莉ちゃんって言ったかな、と」
負傷した場所に包帯を巻かれ終わった茉莉にレノが顔を近づける。
「誰に電話してるのかわかるか、と」
「ヒロユキさんじゃないんですか?ボスが信頼している人のお一人だと思いますが」
乱暴に相手との会話を終わらせると飛は折りたたみの携帯をぽんと軽々しくレノに投げて返した。
暫く口許に手を当てて考えていた飛がつかつかと茉莉の目の前に足を運び、何の前触れもなく、茉莉の頬を一発張った。ぱぁん、という音がして茉莉が叩かれた頬を手で押さえる。
「何故叩かれたか、判るな?」
「判ってます」
「ならいい。嬢、お願いがあるのですが」
救急箱に道具をしまっていたの手が止まる。
近くにあったメモ帳にさらさらと住所を書く。
「ここに行って、芙蓉という少年を連れてきてください。多分、激しく抵抗されると思いますのでレノを連れていったほうがいいかと」
「……飛さんが」
そこまで言って飛は首を振る。
「私が電話で迎えを寄越すと言っても信用しない子です。自分の目で、耳で、身体で感じることしか信用しない子ですので……。多少の怪我なら許しますので、お願いできますか?私はちょっと…まだやらなくちゃいけないことがあるので」
「判りました。必ず連れてきます」
レノとが応接間から出て行ったのを見届けて、飛が満足そうに微笑む。
「ボス………」
「俺様が迎えに行ってもよかったんだがな」
飛が呼んでいるから、といわれて芙蓉はのこのこついてくるような人種じゃない事くらい、飛は充分承知していた。
それでも飛がここにとどまらなくてはいけないのには理由があった。
「さぁて、俺様も準備しなきゃだな。
茉莉、お前はユキを迎える準備を。それから、……澪さんと霧さんにはご迷惑をおかけすると思いますのでここからの撤退を」
「妹を心配して何が悪い!?」
「……事態は家を既に凌駕しています。家の娘じゃなくてもタークスである以上、起こり得る事態だった……判りますよね?」
霧の反論の態度を澪が押さえ、飛の眼前へと立つ。
「君は…神羅の関係者ではないはずだ」
「アッシュとは因縁でしてね。……何より、あのルーファウスに盾突いてしまったもので」
勿論、それは。
レノも、も、そしても。
「……俺達四人は共犯です。貴方方は何も関知していなかった、そう言って下さるだけでいい。それだけで…」
「ここは撤退しても構わない。だが、神羅を敵に回すのが怖いわけじゃない」
応接間の扉を派手に開け、澪と霧が振り向く。
「神羅如き、敵に回したところで損害も何もないさ」
閉まった扉を見て飛がにやりと笑う。
「下手にや貴方方に手を出して痛い目を見るのは…神羅でしょうね、そりゃ」


「で、その住所はここでいいのかな、と」
鉄製の門の前に車を停めて、レノは呆れたように溜息をつく。
「いい…はずなんですが…」
門から遠く離れたところに見える一軒の家に、は見覚えがあった。
飛が普段、宝石店ではないときに使っている家なのはから聞いて知っていた。だが、ここが実際どういう場所なのか、それはまだ聞かされてなく、も困惑した表情で門を見つめていた。
門にインターホンはなく、仕方なしにレノは門に手をかけた。
刹那。
「…どちら様ですかね」
門の隙間からレノの首筋に宛がわれたダガーが太陽の光を受けて反射する。
「飛…さんのお使いで…」
「ボスの使い?それはそれはご苦労様です」
す、とダガーを引っ込めた相手には安堵の溜息を漏らした。
きぃ、と門が開き、そこには茉莉にそっくりな青年の姿があった。左手にはダガーを。そして、腰には鞭を携えた姿で青年は値踏みするような目でレノとを交互に見比べた。
「貴方は…さんですね」
「あ、はい」
すぅ、と再びレノの首筋にダガーが宛がわれる。
「貴方は…?」
「レノさんと言って私の先輩に当たる人です」
「そうですか。ですが、俺にとって信用できる人間はボス一人。……さんを疑うわけではありませんが、貴方を信用するわけにはいかないんですよ」
しゅ、と空気が切り裂かれ、レノのワイシャツが縦に裂かれる。
「やる気ですか、と」
腰元にあった電磁ロッドを取り出してレノが青年を見る。
「ボスが一緒なら信用しますがね。貴方方を通したボスの言葉では信用に値しません。過去何度かそういう経験がありますので」
鞘にダガーを戻すと青年はにこやかに微笑みながら鞭を携えた。
「自己紹介が遅れました。
……芙蓉と申します。以後お見知りおきを。…最も、以後があれば…ですが」
にこやかにそう話すレノの眼前の青年は、レノよりも華奢でレノが本気を出せば簡単に倒れそうなほど細かった。
それなのに、鞭を構えている芙蓉に。
…レノは突っ込めずに、苛々した瞳で芙蓉を見ていた。
「本当に私達は飛さんのお使いで…!」
「えぇ。だと思います。…でもね、さん。それでも俺達ファミリーはボス以外の人間の言葉を早々信用してはならないという掟があるんですよ」
だから、すいませんね。
という言葉を芙蓉は続けた。
「あぁ、ごちゃごちゃと五月蝿いぞ、と。兎に角、アンタが納得するまで戦えばいいんだろ、と」
「そうですよ?……俺が認めれば、たとえ、貴方方の言うところのボスの言葉が偽者でも何処へでもついて参りましょう」
「だったら、話は早いぞ…、と!」
電磁ロッドを構えて一気にレノが間合いをつめた。
普通の戦いならば不意打ちになる。
電磁ロッドが芙蓉の鎖骨を目掛けて振り下ろされる。
骨の砕ける音を想像して、は目を伏せた。
「…不意打ち作戦、大いに結構!ですが、甘いんじゃないんですか?」
鞭に絡められた電磁ロッドがレノの手から離れ、空中を舞う。その先を芙蓉の鞭が絡まり、電磁ロッドが芙蓉の手の中に納まる。
「…さぁ、どうしますか?」
もう一度、にっこりと芙蓉がレノに向かって微笑んだ。


To Be Continued