I fight and am hurt, and there can be the thing that I do not understand that I am not bleeding.


「…くっ」
タイマン上等、素手勝負上等と言わんばかりにレノが芙蓉へ突っ込んだ。
武器もないその状態で芙蓉の胸倉へ手を伸ばす。
「……学習能力はあるんですか、貴方」
「五月蝿いぞ、と」
とん、と後ろへ一度跳ねると芙蓉はにっこりとレノを見た。
不意に鳴り響く携帯電話の音。
レノのものでもなく、のものでもない。とすれば。
「Hello?」(もしもし?)
電話の相手に短い返事を返しながら、芙蓉は小さく頷いていく。
「OK, a boss.」(OK、ボス)
芙蓉が持っていた電磁ロッドをレノの方へと投げた。
「Let's give up with them. …Oh??Is it a password? Well, it is over "death to a betrayer", and how is it?」(彼らと一緒に参りましょう。…え?合言葉ですか?そうですね、『裏切り者には死を』でいかがですか?)
携帯電話を切り、芙蓉がにこりと笑う。
「特例ですよ。時間がないみたいですので。…ボスのところへ案内してください」
やれやれ、と小さく芙蓉は呟く。

乗り込んだ車の中、助手席に座っているレノは終始無言だった。
あれだけ簡単にあしらわれたレノをは初めて見た。
レノの実力が低いからではない。
「実戦、踏んできてやがるな、お前、と」
「俺達はマフィアですよ?……主に飼い慣らされている犬と一緒にしないでいただきたい」
むす、っとした表情がバックミラーに映る。
そうだ。
いつも笑っていて忘れるところだったが、飛も……。
「お前、俺の事嫌いだろう、と」
「ええ、嫌いです」
にこりともせずに、淡々と言葉を紡ぐ。
「というより、神羅カンパニーが嫌いかも知れません」
ふっとその表情を緩めた。
「どういう、意味」
「魔晄炉が俺達に何をくれますか?
俺達に安らぎをくれますか?
住むところを。
親を。
兄弟を。
総てを。
命を。
感情を。
愛しさを」
そしてそこで芙蓉は口を噤んだ。
「……ボスが俺達に与えてくれるものを、魔晄炉は、神羅カンパニーは与えてくれるんですか?」
レノもも何もいえずに押し黙った。
恩恵を預かっているのはごく一部。
その事実を突きつけられた気がした。
「俺達にとってボスは絶対無二。
あの人が死ねというのなら、今すぐにでも。
あの人に嫌われたら、俺達は生きていけない」
「でも!そんな、無茶苦茶な要望!」
死ねなんて、言うのだろうか。あの飛が。
と、は小さく自問自答する。
自分の知っている飛は、いつでも穏やかに笑っていて、の隣でいつだって穏やかな表情を浮かべていた。
「ボスは俺達の総てです」
その言葉には絶句した。
あのルーファウスでさえ、ここまですっぱりと云うような人間がいるだろうか、と。
「じゃあ……もし……」
言ってはいけない。
「もし、飛さんが……貴方達に……要らないって言ったら」
「死にますよ。当たり前じゃないですか。要らない子供は、要りません」
の視界がぼやける。
何故、あっさりと言ってしまえるのか、と。
「ま、あの飛に限ってお前らを見限ることなんて、ないだろうけどな、と」
その言葉に芙蓉が一瞬目を見開いて。
「……神羅は嫌いですが、貴方達は毛の先くらい好きになりましたよ」
そう言って、芙蓉は目を瞑った。

To Be Continued